家の外壁や屋根には、紫外線や雨から建物を守るための塗装がされています。この塗装は年々劣化してくるため、建物自体にダメージがでないためには定期的な塗装が必要です。
今回は外壁・屋根の塗装をするときに知っておきたい、塗料の成分や品質について解説します。
塗料を構成する4成分(樹脂・顔料・添加剤・溶剤)
外装リフォームで使う塗料のメインとなる成分は「①樹脂、②顔料、③添加剤、④溶剤」の4つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
➀樹脂
塗料の耐久性を大きく左右するのが、樹脂の種類。長持ちするほど、値段は高くなります。
外壁リフォームではこれまでシリコン系の塗料がよく使われてきましたが、塗り替え回数を減らしてトータルのコストや手間を削減したいと、グレードの高い塗料を選ばれる方も増えています。
②顔料
顔料は塗膜に色をつける成分です。そのため色をつけずに外壁のデザインを生かしたい場合は、顔料の含まれない「クリヤー塗料」を使います。
③添加剤
添加剤は、塗料にさまざまな機能を追加して、塗膜の性能をアップさせる成分です。
添加剤の例
- 艶消し剤:塗膜の光沢度を下げる
- 色分かれ防止剤:色むらや色浮きを防ぐ
- タレ止め材:塗料が垂れてくるのを防ぐ
- 消泡材:気泡ができにくくし表面をなめらかに仕上げる
- 分散材:顔料を溶剤や樹脂に分散しやすくし、塗料を安定化させる
など
④溶剤
ここまで紹介してきた「①樹脂、②顔料、③添加剤」の3つは「塗膜成分」と呼ばれるもの。これを水やシンナーなどの溶剤で薄めて、塗りやすくして使います。
塗料を選ぶときの4つのポイント
外壁や屋根に使う塗料を選ぶときには、以下の4つのポイントを意識しましょう。
ポイント1. 耐用年数
耐用年数、つまりどのくらい塗料が長持ちするかという数字です。一般的に長持ちする順に、無機系>フッ素系・光触媒系・ピュアアクリル系>シリコン系・ラジカル系>ウレタン系>アクリル系といった並びになっています。
メーカーは「促進対候性試算機」で意図的に紫外線や雨などにさらされた状態をつくり、各商品がどのくらい長持ちするか検証しています。新築時を想定して耐用年数を出しているので、2回目、3回目の塗装では耐用年数にずれが出てくることも。あくまでも「目安」として考え、詳しいことは施工会社に相談しましょう。
ポイント2. 水性塗料or油性塗料
先ほど成分のところで紹介した「溶剤」に何を使うかによって、水性塗料か油性塗料かが決まります。
水性塗料 →水で塗料を溶かす | 油性塗料 →シンナーなどの有機溶剤で溶かす |
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・ニオイが少ない ・引火の危険性が低い(保管しやすい) ・耐久性に劣る ・窯業系やモルタルとは相性が良いが、金属には密着しにくい | ・ニオイが強い ・引火の危険性が高い(保管に注意) ・耐久性に優れる ・どんな素材でも密着しやすい |
水性塗料はニオイが気になりにくく、人体や環境にもやさしいというメリットがありますが、金属系には密着しにくいというデメリットが。金属系サイディングやトタン、アルミやステンレスなど、油性溶剤のほうが向いているケースもあります。
最近は油性塗料のシンナー臭が気になるという方も多いので、弱いシンナーでも溶かせる「弱溶剤」というタイプも開発されています。
ポイント3. 1液型or2液型
塗料には1液型と2液型と呼ばれる種類があります。
1液型 →そのまま使用する | 2液型 →硬化剤を混ぜて使用する |
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・手間がかからない ・比較的コストが安い ・余った塗料を翌日も使用できる | ・混ぜる手間がかかる ・耐用年数が長め ・使用できる範囲が広い |
【使用箇所】 コンクリート・サイディングボード・セメントモルタル・旧塗膜 | 【使用箇所】 金属部分(鉄・アルミ・ステンレスなど)・コンクリート・サイディングボード・セメントモルタル・旧塗膜 |
もともとは2液型が主流でしたが、最近は割安で手間のかからない1液型も使われます。
ポイント4. 希釈率を守る
塗料は水やシンナーで希釈してから使いますが、商品によって最適な希釈率が決められています。メーカー指定の希釈率よりも薄めて使うと、たしかに塗料1缶で塗れる面積は広くなりますが、耐久性がぐんと落ちてしまいます。メーカー公称の耐用年数が10年なのに、2~3年ではがれてくることもあるのです。
希釈率は「5~10%」など、ある程度の幅を持って設定されています。これは、気温や湿度によって、塗料の粘度が変わってくるからです。寒い日には粘度が高まるため、夏場に比べると少し薄めにつくる必要があります。
故意に利益を上げようとする会社でなければ、メーカー指定の希釈率はしっかり守って使うのが基本です。せっかく良い塗料を選んでも、使い方によって品質ががくっと落ちてしまうこともあるため、正しい施工をしてくれる会社を選びましょう。
まとめ
外壁や屋根塗装では、素材や希望する耐用年数にあわせて適切な塗料を選ぶこと、そしてメーカーが規定している使い方をしっかり守って塗装することが大切です。大事なお家を長持ちさせるため、そしてよけいなメンテナンスコストをかけないためにも、正しい知識をつけて施工会社を選びましょう。
記事の監修者
設計士
西村佳晃
一級建築士 / 一般耐震技術認定者 / 宅地建物取引士
建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。
建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。