開放感のあるキッチンの一種であるペニンシュラキッチン。リビング側にいる家族の存在を感じながら調理や片付けをしたいと考えている方に、ぴったりのレイアウトです。リフォームで導入するときの費用や利便性、どのようにするとおしゃれに見せられるのかなど気になるところではないでしょうか。
今回はペニンシュラキッチンのメリット・デメリットや、リノベーションにかかる費用などを解説します。おしゃれなペニンシュラキッチンの施工例も紹介するので、イメージをつかむ際の参考にされてください。
ペニンシュラキッチンとは?
「ペニンシュラ」は英語で「半島」という意味を持ち、半島のようにキッチン本体の左右どちらかが壁にくっついているのが特徴。壁で仕切られていないオープンキッチンの一種で、開放感があります。
アイランドキッチンや対面式のI型カウンターキッチンと同じように、リビング・ダイニング側を向いて作業をするので、「家族と会話をしながら料理がしたい」「リビングにいる子どものようすを見守りながら家事をしたい」といった方に人気のレイアウトです。
ペニンシュラキッチンとアイランドキッチンの違い
ペニンシュラキッチンとアイランドキッチンは、どちらもオープンキッチンの一種。壁などで仕切られておらず、キッチンカウンターがフラットになっています。
両者の違いは「キッチンの左右が壁に接しているか?」という点です。
・ペニンシュラキッチン→本体の左右どちらかが壁にくっついている(半島型)
・アイランドキッチン→本体のどの面も壁に接していない(島型)
アイランドキッチンは四方に通路があって、キッチンの周りをぐるりと回遊できる動線になります。ただしキッチンの左右に通路を必要とするため、広めのスペースがないと設置できません。
ペニンシュラキッチンは、左右どちらかの通路がないぶんコンパクト。オープンなキッチンにしたいが間口が狭いという場合によく選ばれます。
ペニンシュラキッチンのメリット・魅力とは?
ペニンシュラキッチンを設置すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここではペニンシュラキッチンの魅力を4つご紹介します。
壁にさえぎられず開放感のあるLDKをつくれる
ペニンシュラキッチンは周囲が壁で遮られておらず、リビングまで視界が抜けます。リビング・ダイニング・キッチンが一体となった、開放感のある空間づくりを叶えられるのが魅力です。面積の狭い住宅でも、なるべく壁をつくらないオープンな設計をすることで、実際よりも広く感じさせることができます。
対面式でコミュニケーションがとりやすい
リビング側に視線が向くレイアウトは、作業をしながらリビング側の家族や来客とコミュニケーションをとることができます。特に「友人を呼んでホームパーティーをしたい」という方や、「親の姿が見えないと不安がる小さな子どもががいる」というご家庭におすすめです。家事をするようすがオープンになることで、お子さんが自然と料理に興味をもったり、夫婦の家事シェアがしやすくなったりという効果も期待できます。
片側が壁についているため狭い間口で設置できる アイランドキッチンは両側に通路をつくる必要がある一方で、ペニンシュラキッチンは片側の通路のみ確保できれば設置できます。狭い間口でも導入しやすいので、狭小住宅やマンションにもおすすめです。十分な広さが確保できずにアイランドキッチンを諦めている方は、一度ペニンシュラキッチンを検討してみてはいかがでしょうか。
天吊り・横壁付けどちらのレンジフードも選べる
レンジフード(換気扇)のデザインも、オープンキッチンの見た目を左右する要素のひとつ。アイランドキッチンは天吊り一択ですが、ペニンシュラキッチンは天吊り・横壁付の2タイプから選べます。
天吊りは壁と接せずに設置するので、抜け感があってスタイリッシュな仕上がりに。しかし現場によっては施工が難しかったり、費用が高額になってしまったりすることもあります。スタンダードな横壁付は比較的安易に設置できるのがメリットです。
ペニンシュラキッチンのデメリットとその対策方法
ペニンシュラキッチンにはメリットが多数ありますが、反対にデメリットも存在します。デメリットをカバーすれば快適に使えるキッチンなので、ここで対策方法もいっしょにチェックしましょう。
手元がリビング側から丸見えになる
ペニンシュラキッチンは、基本的に作業台の上がフルフラット。そのため手元がリビングから丸見えになってしまうというデメリットがあります。仕事や育児などで忙しい方や、片付けが苦手な方は、キッチンをきれいに保ち続けるのが難しく感じられることがあるかもしれません。
対策方法
リビング側からキッチンが丸見えになるのが気になる方は、腰壁を設けたりカウンターを立ち上げたりする目隠しに。また収納スペースを十分に確保して、キッチンを片付けやすくするのも対策の一つになるでしょう。
油や水がリビング側に飛び散りやすい
ペニンシュラキッチンにもアイランドキッチンにもいえることですが、油や水がリビング側に飛び散りやすいというデメリットもあります。揚げ物や炒め物をするときにコンロまわりの床が汚れやすかったり、洗い物をするときにリビング側に水飛沫が飛んでしまったりするのが気になる方もいるかもしれません。
対策方法
掃除を楽にしたいという方は、コンロ前に壁を立ち上げたり、オイルガードと呼ばれるガラスパネルを設置したりしましょう。透明なオイルガードなら開放感を損なうことなく、飛び散り対策ができます。市販のオイルガードを購入して、揚げ物や炒め物のときだけ使うというのも1つの手です。
吊戸棚がなく収納スペースが確保しにくい
ペニンシュラキッチンでは開放感を重視するために吊り戸棚をつくらないことも多いです。そうすると収納スペースが下台や背面収納のみとなるため、ストック用品や調理器具の収納場所に困ることもあります。
対策方法
引き出しタイプの下台にすると、開き扉よりも収納量がアップ。足元ギリギリまで引き出しになっているキッチンを選べば、本体だけでも十分に収納ができるでしょう。背面スペースには家電製品を置けるようにカップボードを設けたり、食器を片付けられるように棚を設けたり。パントリーをつくると、備蓄の食品もたっぷりとしまえて、キッチンが片付けやすくなります。
ペニンシュラキッチンの設置費用
壁付けのI型キッチンからリフォームする場合、本体価格と施工費込みで約60〜200万円です。移設する際に配管、床、壁などにも手を加えるため、大掛かりな工事になります。一方でもともと対面式の場合でキッチンの位置をあまり変えずに済むなら、リフォーム費用は約50〜150万円と抑えることが可能です。
ただし、キッチン本体の間口やグレードによって費用は大きく上下します。少しでも費用を抑えたいなら、あらかじめ予算を立ててリフォーム会社とプランを練りましょう。
食洗機など取り入れたいオプションが多い場合は、優先順位をつけて厳選してみてください。使っている光景をイメージしながら選ぶのがコツですよ。
ペニンシュラキッチンを選ぶときの基本のポイント
ペニンシュラキッチンにリフォームされる時は、基本のポイントを3つおさえましょう。
設置場所の奥行き・間口
使いやすいキッチンにするためには、設置場所にあわせてキッチンの奥行きや幅を決めることが重要です。ペニンシュラキッチンの間口は180〜270cmくらいが一般的。間取りにあわせてそれよりも大きいサイズにしたり、コンパクトなサイズにしたりすることもあります。
キッチンの横や背面収納との通路は最低でも60cm前後確保しましょう。1人が手ぶらで行き来するのに必要な幅です。食器やものの出し入れを余裕を持って行いたい場合や、2人以上でキッチンに立つことが多い場合は、80cmほど奥行きを取るのがおすすめです。
ワークトップの素材
ぺニンシュラキッチンを長くキレイに使い続けるために、こだわりたいのがワークトップの素材。見た目の好みや掃除のしやすさを考慮するといいでしょう。ワークトップの種類は主に以下の3種類です。
ステンレス
シャープな印象になる、ポピュラーなワークトップ素材。リーズナブルで耐水性・耐熱性・耐久性に優れています。表面に小さな傷がつきやすいのが欠点ですが、傷が目立ちにくいエンボス加工やバイブレーション加工などがされた商品もあります。
人工大理石
大理石風の樹脂系の素材。模様もさまざまあって、エレガントなテイストのキッチンにおすすめです。耐熱性のある素材なので、変形しにくいメリットがあります。ただし直接鍋を置くことには向いていません。
セラミック
耐水性・耐熱性・耐久性に優れている素材。とくに熱への強さが特徴で、調理後の熱い鍋やフライパンを直接置いても変色や変形が起こりません。非常に硬く、まな板なしで包丁を使っても傷がつかないほど。見た目は焼き物のような高級感のある風合いです。
面材の素材やカラーリング
キッチンの扉や素材は、リビングやダイニングとの相性を考えて選びましょう。面材には主に以下の6種類があります。
面材の種類 | 特徴 |
---|---|
塗装 | ウレタン樹脂塗料を板に塗装。カラーが豊富で、質感もマットからツヤありまでさまざま。 |
メラミン化粧板 | プラスチックの板材。傷や汚れに強く、コストパフォーマンスも良い。 |
木質 | 木の自然な風合いが楽しめる。ウレタン樹脂でコーティングされていると水に強い。 |
シート | 樹脂製のシートを板に貼り付けた素材。低価格で色やデザインが豊富。めくれに注意。 |
ステンレス | 水に強く衛生的。表面の仕上げ方によって、傷のつきにくさや光沢感が変わる。 |
ホーロー | 金属板にガラス質を焼き付けた素材。高級感があり熱や水、汚れに強い。 |
それぞれデザインもカラーもバリエーションが豊富なので、選ぶのに困ってしまうかもしれません。なかなかご自宅にあう面材が決まらない場合は、リフォーム会社に相談してみましょう。
ペニンシュラキッチンのおしゃれなリノベーション事例5選
ここからはスペースアップのペニンシュラキッチンのリフォーム事例を5つご紹介します。ペニンシュラキッチンの施工イメージがなかなかつかめない方は参考にしてみてください。
【事例1】お手入れしやすいペニンシュラキッチン
独立型キッチンを、リビングを見渡せるオープンなペニンシュラキッチンへリフォームした事例です。油がリビング側の床や家具まで飛び跳ねてしまうことを防ぐため、コンロ前に耐熱ガラスを設置。これでお掃除も耐熱ガラスとコンロ
周りだけで済ませられます。またコンロだけでなくシンク前にも立ち上がり壁があるため、洗い物をしたときも水がリビング側まで飛び散りません。
リビング側の床材はフローリングですが、キッチンスペースは耐水性のあるフロアタイルに。醤油やケチャップなどをこぼしてしまっても、簡単に拭き取ることができます。メンテナンス性まで意識して素材やパーツ選びをしたことで、開放的でお掃除も楽なペニンシュラキッチンになりました。
【事例2】タイル×木目が可愛いペニンシュラキッチン
こちらも独立型キッチンから、リビングダイニングに目が届く対面式のペニンシュラキッチンにリフォームした事例です。開放感はありますが、腰壁を立ち上げているので手元がリビング側から丸見えになりません。腰壁にはカラフルなタイルを取り入れて、シックなLDKの遊び心あるアクセントになっています。
注目したいのが、キッチンの奥が浴室へとつながっていること。通常のペニンシュラキッチンは回遊性はありませんが、こちらのキッチンは「リビング⇔キッチン⇔浴室」がぐるりと移動できる回遊動線になっていて、家事の同時進行もスムーズです。
【事例3】造作ニッチのある北欧風ペニンシュラキッチン
独立型の壁付けキッチンから、対面キッチンへとリフォームされた事例。リビングはフローリングで、ダイニングキッチンはオレンジ色のテラコッタタイル柄のフロアタイルに。お手入れもとても楽な素材なので、油や水がはねてもサッと拭き取ることができます。LDK全体を木目と白を中心とした北欧テイストでまとめて、キッチンのオレンジをアクセントにしています。
キッチンには腰壁を立ち上げて、リビング側からスッキリと見えるように。腰壁の厚みを生かしてニッチ収納をつくって、お酒や小物などを飾っています。
【事例4】大容量収納があるエレガントなペニンシュラキッチン
フローリングや背面にある収納棚のブラックと、ペニンシュラキッチンのホワイトのコントラストがモダンなキッチンの事例。ペニンシュラキッチンの短所である収納の少なさを、背面収納を充実させることでカバーしました。
お気に入りの食器棚は、リビングやダイニングからよく見える位置に。その隣に扉付きの大容量収納をつくり、雑然として見えがちな備蓄品や食器類を隠してしまえるようにしました。コンロ横にはリビングから見えない向きに背の高い棚を設け、電子レンジやゴミ箱など生活感がでやすい物を収納しています。
【事例5】ダークブラウンで大人なペニンシュラキッチン
ダークブラウンで統一したペニンシュラキッチンの事例です。観葉植物などのグリーンをさりげなく取り入れることで、居心地のよい環境に。大人っぽく、ぬくもり感のあるキッチンに仕上がりました。
背面収納はワイドなカウンターに、上部の戸棚を組み合わせたタイプ。カウンター上には電子レンジやコーヒーメーカーなどの家電を置けて、配膳や作業スペースとしても使えます。
ペニンシュラキッチンでよりおしゃれな空間にするコツ
おしゃれなペニンシュラキッチンをつくるには、リビングとの調和や収納方法にこだわるのがポイント。次のようなコツを抑えて、空間をコーディネートしましょう。
リビングとの調和を考えてコーディネートする
ペニンシュラキッチンは、リビングやダイニングからの見通しがよいレイアウトです。キッチンのインテリアがリビングにも影響するので、インテリアテイストに統一感がでるようにコーディネートしましょう。テイストは北欧風やモダン、シンプルなどさまざまなので、インテリアコーディネーターや設計士とも相談しながらカラーや素材を決めます。
生活感を隠せるような収納を設ける
生活感のでやすい調味料や食器などは「隠す収納」がおすすめ。リビングから見えやすい背面収納は中身が見えないように扉付きの棚にしたり、キッチンと隣接する一角にパントリーと呼ばれる収納部屋をつくったりする方法があります。逆にお気に入りの家電や食器など積極的に見せたい物がある場合は、飾りながら収納できるオープンな棚を設けましょう。
まとめ
本体の左右どちらかが壁にくっついているペニンシュラキッチン。リビングやダイニングで過ごす家族の様子を見守りながら作業ができるので、安心して調理や片付けに取り組めます。省スペースでもオープンなキッチンが叶えられ、間口が狭い家で採用しやすいのもメリット。リビング側に水や油などの汚れが飛ぶのが気になる方は、汚れ落ちのいい床材を選んだり、コンロ前にオイルガードを設けたりすることで、掃除も楽になります。オープンなキッチンは、LDK全体のインテリアにも影響大。スペースアップにはインテリアコーディネーターも在籍しておりますので、どうすれはおしゃれになるのか悩んでいる方はぜひご相談ください。
記事の監修者
リフォームアドバイザー
藤本塁
お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。
お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。