便器の後ろにタンクがなく、スタイリッシュなフォルムが人気のタンクレストイレ。省スペースで設置でき、掃除もしやすくなることから、リフォーム時はタンクレストイレに交換したいという方も多いのではないでしょうか。今回はタンクレストイレのメリットやデメリット、リフォーム費用、メーカーごとの商品の違いなどを解説します。タンクレストイレでトイレがおしゃれになった施工事例もご紹介しますので、ぜひリフォームの参考にされてください。
タンクレストイレとは?
タンクレストイレとは、便器の後ろの貯水タンクがないタイプのトイレのこと。水道に直接つないで、水道からでてくる水圧によって排水します。1993年にTOTOから日本初のタンクレストイレ「ネオレスト」が発売されて以来、日本の狭いトイレ空間でとても重宝されているトイレ設備です。
タンクレストイレでは便器と便座がセットになっており、ウォシュレットなどの機能がついている商品が多いのも特徴。ただし手洗器は備えていないので、別に設置する必要があります。
タンクレストイレとタンク付きトイレの違いは?
従来のタンク付きトイレは、タンクに貯めた水の重みで勢いをつけて、水を流すしくみになっています。そのため一度水を流すと、タンクに水が貯まるのを待たないとうまく流すことができません。
それに対してタンクレストイレは、水道と直結で水を流す構造になっています。そのためマンションの上階など水圧が低いところでタンクレストイレを採用する場合は、低水圧に対応した商品を選ぶ必要があります。
タンク付きトイレで最も普及しているのが「組み合わせ便器」。便器・タンク・便座をそれぞれ選んで組み合わせることができます。この3点がセットになっているのが「一体型トイレ」、手洗いや収納などを組み合わせるのが「システムトイレ」です。
タンクレストイレのメリットは?
タンクレストイレには、見た目や清掃性などのメリットがあります。
すっきりとした見た目
タンクレストイレの最大のメリットは、見た目がすっきりしていること。全体のシルエットが低く、壁の見える面積が増えるため、これまでよりもトイレ空間が広く感じられるでしょう。
また従来のタンク付きトイレとは異なり、野暮ったさが最小限に抑えられたスタイリッシュなデザインも魅力。若い世代やインテリアにこだわりのある方、おしゃれな店舗などにも人気です。床や壁、収納、照明などもこだわってコーディネートしましょう。
省スペースで設置できる
タンクがないことで、非常にコンパクトになるのも大きなメリット。タンク付きトイレと比べると、奥行に10cm前後の余裕が生まれ、高さが30cm前後低くなります。
タンクレストイレに変更すると、座ったときも足元に余裕がでて窮屈に感じにくいでしょう。面積の狭いトイレはもちろんのこと、空いたスペースに収納や手洗器を新しく設置してトイレ空間を充実させたいという方にもおすすめです。
凹凸や隙間が少なく掃除しやすい
シンプルなつくりでお掃除がしやすいのも、タンクレストイレの人気の理由。便器とタンクの間の隙間がなく、便器まわりや床をさっと拭き取るだけでキレイに保つことができます。今までタンクが邪魔で拭きにくかった部分も、楽に拭くことができるでしょう。
また最新のタンクレストイレは奥まで手が届くように便座がリフトアップしたり、汚れや水垢のつきにくい素材が使われていたりと、毎日のお掃除が簡単になるよう随所に工夫がみられます。
水が貯まるのを待たず連続で流せる
従来のタンク付きトイレは、一度水を流したあと、タンクに水が貯まるのを待たないと2回目の水を流すことができないしくみです。タンクに水が貯まるまでの時間は1〜2分ですが、不便に感じたことのある方も少なくないのではないでしょうか。
タンクレストイレは水道直結なので、連続で流すことができます。家族が連続でトイレに入る朝の時間や、トイレを掃除する際にも、ストレスフリーです。
タンクレストイレのデメリットは?
一方で、タンクレストイレには次のようなデメリットもあります。
手洗い器がないので別途必要
タンクレストイレには、トイレ本体に手洗器は付属していません。そのため今お使いのトイレが、タンク上に手洗器のついたタイプの場合は要注意。タンクレスに交換したあと、どこで手を洗うのかを考えなければなりません。
まず、トイレと洗面所が隣り合っている場合は、トイレを出てすぐ洗面所で手を洗えるのであまり問題にはならないでしょう。トイレ内にスペース的な余裕があれば、別売りの手洗器の設置をすると使い勝手がアップします。コンパクトな手洗器のほか、収納を兼ねた手洗キャビネット、手洗カウンターなどもおすすめです。もしトイレが狭く、洗面所も遠い場合は、トイレ付近の廊下などにサブ洗面台をつくるのも一つの方法です。
高層階など水圧が弱いと設置しにくい
タンクレストイレは水道直結で流すしくみなので、水圧が弱いとトイレが詰まったり水が流れにくかったりするというデメリットがあります。昔は水圧不足だとタンクレストイレは設置できませんでしたが、最近は水の勢いを増す加圧装置(ブースター)のついたタンクレストイレが登場したことで、水圧不足の建物でも設置できるようになりました。
水圧が弱くなりやすいのは、マンションの高層階や、戸建て住宅の2階など。また低層階でも、水道管内の状態が悪く、水圧が弱まっているケースもあります。まずはリフォーム会社に現地調査を依頼して「水圧に問題がないか?」「どのようなトイレなら設置できそうか?」を確認してもらいましょう。
停電時に自動で水を流せない
タンクレストイレは電気を使って水を流すしくみです。停電時でも水を流せるように手動レバーや電池式を備えていますが、普段どおりには使えないので不便に感じることもあるでしょう。
非常用の手動レバーは、便器の側面や奥のカバーに隠されていることが多く、使用時にはカバーを外す必要があります。いざ使うときに焦ることがないように、使い方を調べておくと安心です。電池式の場合は、電池を備えておきましょう。
ちなみに従来のタンク付きトイレは、電力不要でレバーをひねって流すタイプなら、停電時も断水さえしていなければ普段どおりにトイレを流すことができます。電力を使って水を流すタイプも、タンクレス式と同様に手動レバーなどがついている商品が多いです。
ウォシュレットのみの交換ができない
タンク付きの組み合わせ便器は、便器・タンク・便座を組みあわえた形状になっているため、故障した部分のみの交換ができます。構造もシンプルなので、ちょっとした不具合であれば、ご自身で対処している方もいらっしゃるかもしれません。
しかしタンクレストイレは便座やウォシュレットが一体になっているため、「便座のみ」「ウォシュレットのみ」のような交換ができません。たとえばウォシュレットが故障したときに、トイレをまるごと交換しなければならないケースもあるということです。ただし部品交換はできるので、不具合があれば修理業者に依頼しましょう。
タンクレストイレの価格やリフォーム費用は?
タンクレストイレに交換する費用は、工事費込みで10〜30万円程度。トイレ本体の価格は、便座の機能によって20万円前後の価格差があります。オート洗浄・オート開閉・脱臭などの機能がついていないタンクレストイレだと、比較的安い価格で購入できるでしょう。
なおタンク付きトイレとの価格差は、同じような機能をもっていると仮定すると、タンクレストイレのほうが1〜5万円程度高くなるイメージ。タンクレストイレでも安い機種なら、ウォシュレット・タンク付きトイレとあまり変わらない価格で購入できることもあります。
また、トイレを交換するときには、床や壁紙の張り替え、手すりやトイレットペーパーホルダーの設置などもいっしょに行う方が大半です。とくに床は交換前の便座の跡が残っていることが多いので、トイレを交換するタイミングで張り替えることをおすすめします。
タンクレストイレの人気メーカー別おすすめ3選!
タンクレストイレは、さまざまなメーカーから販売されています。そのなかでも今回はとくに人気の高い「TOTO・LIXIL・Panasonic」のタンクレストイレの特徴を解説します。
TOTO /ネオレスト
国内で初めてタンクレストイレをつくったのがTOTO。なかでも知名度の高い主力商品がネオレストです。
ネオレストで特徴的なのが「フチなし形状」。汚れが最も溜まりやすいといっても過言ではない便器のフチをなくすことで、お手入れがぐんと楽になっています。従来の縦方向に流れるトイレとは違って、ネオレストはぐるぐると水流が回る「トルネード洗浄」なので、水垢の筋が残りません。
TOTO独自の技術「きれい除菌水」にも注目。薬品や洗剤を使うことなく、水から自動で除菌成分(次亜塩素酸)を含む水をつくり、便器やノズルをきれいに保つことができます。
LIXIL/サティス
LIXILのサティスシリーズには、GタイプとSタイプの2つのグレードがあります。Gタイプはさまざまな機能がついた最上級モデル。Sタイプは日本最小のタンクレストイレで排水の種類も豊富なので、奥行きの狭いトイレ空間におすすめです。
サティスも便器のフチレス形状で、お手入れが楽に。水流ですみずみまで洗う「パワーストリーム洗浄」や、隙間に手が届きやすくなる「電動お掃除リフトアップ」などの機能もついています。
シャープ独自の技術であるプラズマクラスターが搭載されていて、トイレ内や便座裏の浮遊カビ菌や付着菌などをイオンで除去します。
Panasonic /アラウーノ
タンクレストイレのなかで高いシェアをほこるのが、Panasonicのアラウーノです。便器を陶器ではなく樹脂素材にすることで、価格をリーズナブルに抑えています。
しかし価格が安いからといって劣っているというわけではなく、樹脂の加工のしやすさを生かして、汚れが入り込む隙間や段差がない形状を実現。水をはじく有機ガラス系の新素材で、ぬめりや黒ずみの原因となる水垢がつきにくくなっています。
注目したい機能は、細かい泡と水流でしっかり洗浄する「激落ちバブル」。市販の中性洗剤をタンクに入れておくと、水を流すたびに自然と泡が出て便器内がキレイになります。
タンクレストイレのリフォーム事例3選
ここからはスペースアップが施工した、タンクレストイレのリフォーム事例をご紹介します。
【事例1】シンプルなタンクレストイレ
■建築タイプ:マンション
■Panasonic /アラウーノ
シンプルなデザインがお好みの方におすすめしたい、白で統一されたトイレリフォームの事例です。壁や天井、タンクレストイレ、収納、手洗器まで白でまとめています。床は白ではなく淡いグレーを使って高級感をプラス。グレーは黄ばみや黒ずみなどの汚れが目立ちにくい色なので、トイレの床に非常に向いています。
シンプルなトイレ空間は殺風景な印象になりがちですが、こちらは足元に間接照明を設置することで解消。温もり感があって、落ち着いてくつろげる雰囲気になりました。
タンクレストイレは、やはり野暮ったさがなく、このようなシンプルテイストとの相性が抜群。サイドに白い棚と手洗器をつけることで、利便性をアップさせています。
【事例2】和シックなタンクレストイレ
■建築タイプ:戸建て
■TOTO/ネオレスト
上部の窓から庭のもみじを見ることができる、和シックなトイレです。1階のトイレに窓をつくるときには、外からの視線に配慮することが大切になります。こちらのリフォームでは頭よりも高い位置に窓をつくることで、プライバシーを守りながら、採光と眺望を確保しました。
床材は重厚な石をイメージしたフロアタイルで、モダンな雰囲気に。造作カウンターをつくり、ホテルや飲食店のようなおしゃれなトイレ空間になりました。
トイレに鏡があると、お客様が身だしなみを整えることもできて便利。横幅のワイドな鏡は高級感があって、トイレが広々とした印象にもなります。鏡裏の間接照明や、壁のモザイクタイルもアクセントになっていておしゃれです。
【事例3】手すり付きのタンクレストイレ
■建築タイプ:戸建て
■Panasonic /アラウーノ
3世帯家族の全員が使いやすい、ユニバーサルなデザインのトイレにリフォームした事例です。タンクレストイレには手すりをつけて、足腰に不安のあるご家族も安定して立ったり座ったりできるようにしました。
便座のフタはブラックで、白とブラウンのナチュラルな空間のアクセントに。床材はV字の木材が並んだヘリンボーン柄で、おしゃれに演出しています。
タンク上の手洗いは、お子さんや高齢の方には手が届きにくくて困っているというケースも多いのではないでしょうか。こちらは木製のワイドな手洗いカウンターをつけることで、ご家族全員が手を洗いやすいように。カウンター上の空いた部分にはお気に入りのアイテムを飾って、洗剤などの生活感がでやすいアイテムはカウンター内にすっきりと収納できます。
まとめ
リフォームでタンクレストイレに交換すると、トイレ空間が広くスタイリッシュに。汚れがたまりやすい隙間が減って、お手入れも楽になります。商品によっては便器が汚れにくいよう水の流れ方が工夫されていたり、臭いや菌を抑える機能がついていたりと、トイレの清掃性がさらにアップします。
タンクレストイレを採用するには、水道にある程度の水圧が必要です。水圧が弱い場合は、加圧機能付きのタンクレストイレを選ぶなどの対応になります。
まずはリフォーム会社に現地調査を依頼して、どんなトイレを設置できるか確認しましょう。スペースアップではトイレ空間の寸法や配管位置などを確認して、トイレの種類や内装、手洗器、収納などご希望や予算にあわせたご提案をいたします。トイレをおしゃれで使い勝手よくリフォームしたいという方は、ぜひご相談ください。
記事の監修者
リフォームアドバイザー
藤本塁
お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。
お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。