リフォームコラム
断熱窓について

断熱窓の効果4つ|断熱性の高いガラスの種類・有効なリフォーム方法も

暑い夏や寒い冬に、空調を使っても部屋の温度が快適にならないと感じたら、家の断熱について考えてみましょう。窓は自然光を取り込むと同時に、熱の出入りも大きくなってしまいます。住宅の断熱性能を高めるなら、断熱窓の取り付けがおすすめです。

今回は断熱窓の4つの効果をはじめ、断熱性の高いガラスの種類や効果的なリフォーム方法を解説します。断熱窓のリフォームで活用できる補助金制度もご紹介していますので、ぜひ最後までお読みください。

そもそも「断熱窓」とは?

熱には、温度の高いところから低いところへ移動しようとする性質があります。熱が移動しようとする性質を遮るのが、断熱です。

家の中で熱の出入りが最も大きい場所は窓です。せっかく冷房を効かせていても、夏は窓から侵入した熱が室温を上げ、冬は室内のあたたかい熱が窓から逃げてしまいます。熱の出入りを防いで、室温への影響を少なくするのが断熱窓です。

「断熱」とよく似た言葉として「遮熱」があるので、違いを抑えておきましょう。

断熱
壁内部に伝わる熱の量を減らす

遮熱
日射を吸収しないように反射する

断熱は冬に熱が逃げていかないようにするとともに、夏には外からくる熱を侵入させないようにします。それに対して遮熱は、夏に熱の侵入を防ぐのが主な目的です。

断熱窓の主な効果

断熱窓には主な効果が4つあります。それぞれ見ていきましょう。

夏は涼しく冬は暖かくなる

夏場に窓から入ってくる熱の割合は、全体のおよそ7割。窓は開口部なので、外壁や屋根などと違ってどうしてもたくさんの熱が出入りします。冬場にせっかく暖房を使って温めても、窓から逃げる熱の割合は高く、全体のおよそ6割です。

窓の断熱性能を高めれば、窓からの熱の移動を防げるので、一年中快適に過ごすことができます。家の断熱効果を高めるには、まず窓の断熱から考えましょう。

窓に発生する結露を防げる

断熱窓は、結露の発生を防ぐのにも効果的です。
結露とは、水蒸気を多く含んだ暖かい空気が窓やガラスに付着し、冷やされて水滴として付着する現象。特に外と室内の寒暖差が大きい冬場に発生しやすく、しつこい結露の拭き取りに悩まされている方も多いでしょう。
窓に発生した結露は、放っておくとカビが発生し、呼吸器系の疾患を引き起こす原因になることも。

断熱窓を設置すれば、結露が発生する原因になる外と室内の寒暖差を抑えられます。冬の結露と、結露により発生するカビに悩んでいる方は、ぜひ断熱窓の設置を検討しましょう。

光熱費の節約につながる

窓を断熱窓に変えれば、外気温の影響を大幅に削減できます。そのため、冷暖房の効きが良くなり室温を一定に保ちやすく、冷暖房費を含む光熱費の節約につながります。
窓の製造で有名なYKK APは、公式ホームページでアルミフレームの一般的な窓と、断熱窓をそれぞれ10年間使用した場合の冷暖房費を比較しています。
内窓をつけるタイプの断熱窓は、10年間で約24万円。窓を交換するタイプの断熱窓では、約23万円も冷暖房費を節約できます。断熱窓への交換は、冷暖房費を含む光熱費の節約に効果的だといえるでしょう。

ヒートショック予防につながる

断熱窓は室内の寒暖差を抑えるので、ヒートショックの予防につながります。
ヒートショックとは、気温の変化で血圧が上下し、乱れた血圧や脈拍が身体に及ぼすダメージのこと。症状が軽ければめまいやふらつき程度ですぐに改善しますが、ダメージが大きいと心筋梗塞や脳卒中を引き起こすおそれも。特に冬の入浴時に起こりやすく、ヒートショックが原因と推測される死亡事故は、毎年多く発生しています。

ヒートショックの予防には「湯船に浸かる前のかけ湯を習慣づける」「お湯の温度を上げすぎない」などのほか、断熱窓で家の中の温度差を減らすのも効果的です。

断熱性能に優れた窓ガラスの種類には何がある?

断熱窓に使用するガラスは、主に3種類です。それぞれ解説します。

ペアガラス

ガラスを何層か重ねたものを複層ガラスと呼んでおり、特にガラスを二重にしたものがペアガラスです。2枚のガラスの間に空気が入る層をつくることで、断熱性能を高めています。

断熱性能に優れたガラスの中でも、比較的リーズナブルで手軽に取り入れやすいため、断熱窓に広く使われているガラスです。ガラスの間が空気層ではなく真空になっていたり、アルゴンガスが封入されていたりすると、断熱性も価格もアップします。

トリプルガラス

複層ガラスの中でガラスを三重にしたものが、トリプルガラスです。ペアガラスよりも1枚多くガラスを使い、空気の層を多くつくっているため、断熱効果がさらに高まっています。何層にも重なったガラスは強度が高く防犯性に優れていますし、ペアガラスと比べて遮音効果が高いのも特徴です。

一方でガラスを3枚使用しているので、窓自体の重量や厚みが増します。頻繁に開閉する窓や、大きな掃き出し窓の場合は、開閉しやすさも確認しましょう。また価格も他のガラスと比べて高価なので、よく検討してからの採用をおすすめします。

Low-Eガラス

近年、断熱効果のあるガラスの中でも、特に高性能と注目されているのがLow-Eガラスです。ペアガラス内部のガラス表面を、Low-E膜という特殊な金属膜でコーティングしたガラスのことです。Low-E膜には、太陽の熱や室内の熱を反射したり吸収したりする効果があり、断熱効果をさらに高めてくれます。

使用するガラスの枚数に応じて「Low-Eペアガラス(Low-E複層ガラス)」や「Low-Eトリプルガラス」があり、断熱性能が高いのは「Low-Eトリプルガラス」です。

「Low-Eペアガラス」には、断熱性に特化したタイプと遮熱性に特化したタイプの2種類があるのも特徴。Low-E膜を室内側と屋外側のどちらにコーティングするかによって、断熱性や遮熱性に違いが出ます。

●断熱タイプ
室内側にLow-E膜。しっかり断熱しつつ、太陽の温もりを取り込む。日の当たりにくい窓や寒冷地におすすめ。

●遮熱タイプ
屋外側にLow-E膜。明るさを取り込みつつ、強い日射熱はカットするのが特徴。夏の暑さや西日の気になる窓や、温暖な地域におすすめ。

断熱性と遮熱性のどちらを重視するかは、住んでいる地域や住まいの環境によって変わります。Low-Eガラスの特徴を頭に入れて、うまく使い分けましょう。

窓の断熱性を高めるためのリフォーム方法3つ

窓の断熱性を高めるのに、おすすめのリフォーム方法は3つです。それぞれの特徴を解説します。

断熱性の高い窓ガラスへの交換

窓は、ガラス部分のみの交換も可能です。今まで使っていた窓ガラスを断熱性の高い窓ガラスへ交換すれば、見た目も変えることなく断熱性を高められます。交換する窓ガラスのサイズや種類で価格が変わるため、相場は約5~15万円と幅広いです。

ただし、既存のサッシがアルミサッシだと十分な断熱性が確保できないため、サッシの結露や窓枠の隙間からの熱の出入りを解決できません。結露を防いで断熱効果を高めるなら、窓ガラスのみでなく、窓ごと交換するのがおすすめです。

また、既存の窓が単板ガラスであれば、複層ガラスのような厚みのあるガラスはそのままサッシに取り付けられないケースもあります。アタッチメントを使うことで交換できるケースもありますが、ガラス面がリフォーム前より一回り小さくなってしまうデメリットもあるので気をつけましょう。

内窓の取り付け(二重窓・二重サッシ)

内窓の取り付けは、今ある窓の内側に新しい窓を取り付けて二重窓にする方法です。既存の窓と内窓の間に空気の層をつくるため、断熱性だけでなく防音性も高まります。

費用の相場は窓1つにつき、約8~15万円。工事は非常に簡単で、内窓の種類によっては約1時間で完了します。

マンションは窓枠や窓ガラスが専有部分に含まれないケースが多く、自分の部屋の窓であっても窓の入れ替えができないことも。しかし窓の内側は専有部分なので、内窓の設置ならマンションでも実施しやすいです。許可される範囲はマンションによって異なりますので、必ず規約をご確認ください。

アルミ製サッシから樹脂サッシへの交換

一般的な窓でよく使われているのは、アルミ製のサッシです。アルミは熱伝導率が高いため、アルミ製サッシのまま窓ガラスだけ断熱効果の高いものに変えても、熱が伝わってしまい結露が発生しやすくなります。

現在のサッシがアルミ製であれば、熱伝導率が低い樹脂製のサッシに交換することで断熱効果をさらに高めることができます。

その他、樹脂製サッシの内窓を取り付けるのも効果的。費用の相場は、数万円~15万円と幅広いです。窓ガラスの種類やサイズによって金額は大きく変わるため、詳細は見積もりで確認しましょう。

DIYで窓断熱を高めることは可能?

リフォームにはあまりお金をかけたくないので、できればDIYで窓の断熱対策をしたいという方もいるでしょう。DIYでも窓の断熱効果を高めることはできますが、リフォーム会社に依頼して工事をしたときと比べて大きな効果は期待できません。費用も手間もかかる割に、見た目がキレイに仕上がらなかったと後悔する声が多いことも知っておきましょう。

  1. 断熱ボードを置く
  2. 窓に断熱シート・フィルムを貼る
  3. 断熱カーテンをつける

断熱ボードを置く

最も簡単なのは、断熱ボードを置く方法です。
断熱ボードとは、断熱性に優れたパネルのことで、ホームセンターで購入できます。費用は6畳用で10万円~30万円程度かかります。
設置は窓に立てかけるだけなので簡単ですが、掃除の邪魔になったり見た目も大きく損なったりします。窓の結露がひどいと断熱ボードにもカビが発生しやすくなるため、あくまで簡易的なものとして使うのがおすすめです。

窓に断熱シート・フィルムを貼る

次に紹介するのは、断熱シートやフィルムを貼る方法です。費用は1㎡あたり15,000円程度です。
荷物の緩衝材として使われるプチプチや、窓に貼る専用の断熱フィルムを使用します。
どちらもホームセンターで購入できるので手軽に断熱対策ができますが、フィルムをきれいに貼るのは予想以上に難しいです。見た目が気になる場合は、自分で行わず専門のリフォーム業者に依頼しましょう。

断熱カーテンをつける

最後に紹介するのは、断熱カーテンをつける方法です。費用は一般的なリビングで6,000円~10,000円程度です。
断熱カーテンを使うなら、床とカーテンの間に隙間をつくらないことが何よりも大切。窓よりも一回り大きなカーテンをおすすめしますが、窓のサイズによっては断熱カーテンが特注になるケースもあります。
またこの方法はカーテンの裏に結露が発生しやすく、カビの原因にもなるため、定期的に窓を開けて換気をしましょう。

断熱窓のリフォーム時は「補助金制度」の活用もおすすめ!

国や自治体では、断熱窓のリフォームを対象に補助金制度が提供されています。現在実施されている、2つの補助金制度を見ていきましょう。

先進的窓リノベ事業

「先進的窓リノベ事業」は、窓リノベ事業者として登録された業者と契約し、窓のリフォーム工事を行うと支給される補助金です。住宅の所有者が契約を締結するのが条件で、ガラス交換や内窓設置、外窓交換が補助の対象です。
支給額は性能やサイズにより変わりますが、上限は1戸あたり200万円。申請期限は2023年12月31日までですが、予算が上限に達し次第受付終了しますので、早めの申請が必要です。

出典:経済産業省・環境省「先進的窓リノベ事業」/https://window-renovation.env.go.jp/

既存住宅における断熱リフォーム支援事業

「既存住宅における断熱リフォーム支援事業」も、全国を対象とする補助金制度です。
補助金には上限額があり、戸建て住宅の場合で120万円/戸、集合住宅で15万円/戸。玄関ドアの改修も行う場合は、上限が20万円/戸に上がります。
申請期限は2023年12月8日ですが、予算が上限に達し次第受付は終了します。利用したい方は、早めに検討しましょう。

出典:公益財団法人 北海道環境財団「【全国対象】既存住宅における断熱リフォーム支援事業」/https://www.heco-hojo.jp/danref/index.html

どちらの補助金制度も、条件が細かく定められています。あらかじめ確認するか、補助金制度に詳しいリフォーム会社に相談しましょう。

まとめ

家の断熱性能を上げるなら、窓の断熱リフォームがコストパフォーマンス抜群です。窓ガラスの断熱効果に注目して選ぶなら、内側に特殊なコーティングを施したLow-Eガラスを使うのが効果的です。窓の断熱リフォームはDIYでも行えますが、効果も見た目も格段に優れた専門業者に依頼するのがおすすめです。

窓の断熱リフォームでは、条件を満たすことで補助金が支給されることも。工事内容や補助金についてわからないことがあれば、ぜひスペースアップにお問い合わせください。それぞれのご自宅に合わせ、最適な窓の断熱リフォームプランをご提案いたします。

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記事の監修者

設計士

西村佳晃

一級建築士 / 一般耐震技術認定者 / 宅地建物取引士

建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。

建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。