マンションでは、住人が所有権を持つ「専有部分」のみリフォームが可能です。主要な柱や梁・バルコニー・玄関ドアや窓・パイプスペースなどは共用部分のため、基本的にはリフォームできません。
また専有部分でも、マンションの管理規約によってはできない工事もあるため注意が必要です。事前に管理規約を確認し、できること・できないことを見極めましょう。
◯できること | ×できないこと | △条件によって異なる |
・内装変更 ・水回りの交換 ・断熱性能を高める ・コンセントの増設 | ・パイプスペースの移動 ・耐震性能を高める ・バルコニーの変更 | ・間取り変更 ・水回りの移動 ・窓やドアの交換 |
水回りリフォーム
マンションのキッチン・トイレ・お風呂・洗面所などの水回り設備は専有部分のため、定期的に自分でリフォームをしてきれいにする必要があります。好きなシステムキッチンに交換したり、お風呂を新しくしたり、水回り設備の交換で古いマンションも随分暮らしやすくなるでしょう。
しかし、共用部分であるパイプスペース内の給排水管は動かすことができません。
水回りの移動はできる?
水回りの位置を変更したい場合、うまく水を流すための傾斜が必要です。共用部分の給排水管を動かさずに、十分な勾配がとれる場合は、水回りの位置も変えることができます。
間取り変更リフォーム
マンションの主な構造は、ラーメン構造と壁式構造の2種類。ラーメン構造は比較的間取り変更が自由ですが、壁式構造だと間取りが制限されやすいです。
しかし壁式構造であっても、間取り変更をあきらめる必要はありません。撤去できる壁・できない壁があるので、どんな間取りなら叶えられそうかリフォーム会社に相談してみてください。
ラーメン構造 | 壁式構造 |
柱・梁などの「線」で支える工法で、規模の大きな建物で多く用いられます。 間取り図で、部屋の隅に柱の出っ張りがある物件は、ラーメン構造の可能性が高いです。 撤去・移動できる壁が多いので、リフォームでの間取り変更の自由度は高くなります。 | 床・壁などの「面」で支える工法で、比較的低層のマンションで多く見られます。 間取り図で柱の出っ張りが見られない、フラットな物件は、壁式構造の可能性が高いです。 厚い壁で支えており、間取りの自由度は低め。構造に影響しない壁は撤去可能です。 |
天井は高くできる?
一般的に天井の裏には30~40センチほどの空間が設けられています。もし設備上問題がなければ、この空間を狭くする、もしくは天井仕上げを撤去して「躯体現し」にすることで、天井高は数十センチ高くなります。
ロフトはつくれる?
天井までの高さがある程度あれば、ロフトを設置することも可能です。ロフトを支える柱が必要になるので、床のスペースが狭くなってしまうなどのデメリットは検討しなければなりません。
2戸をつなげられる?
原則として、住戸の間の壁は共用部分なので、撤去したり穴をあけたりできないルール。狭いマンションの住戸を2戸つないで広くすることは、基本的には難しいです。しかし、構造的に問題がなく、マンションの管理組合等から承諾がもらえれば、可能なケースもあります。
内装リフォーム
床や壁といった内装は専有部分なので、基本的には自由にリフォームできます。しかし管理規約によって素材に規定があったり、禁止されている事項があったりするので、十分に確認しましょう。
床材は変更できる?
マンションでしばしば問題となるのが、下の階への騒音です。そのため物件によっては、管理規約で「フローリング禁止」「遮音等級◯以上のフローリングで」と指定されていることもあります。床材を変更するときには、必ず管理規約を確認し、物件に合わせた床材や工法を選びましょう。
戸境壁に穴はあけられる?
大型家具の固定など、壁にビスや釘を打ちたいケースもありますよね。隣の住戸との間の戸境壁自体は共用部分なので、直接穴をあけることはできません。しかし二重壁構造であれば、内側の壁に穴をあけることができます。もともと直壁の場合も、リフォームで壁を立てて二重壁化することが可能です。
開口部(窓・ドア)のリフォーム
住戸内の各部屋のドアは自由に変更できますが、共用部分である玄関ドアや窓のリフォームは、管理組合に確認することとなります。
窓は変更できる?
マンションの窓枠(サッシ)や窓ガラスは共用部分にあたるため、基本的に自己判断でのリフォームはできません。「窓が壊れた」「断熱性能を上げたい」などの理由で、窓枠の修理・交換が必要な場合、必ず管理組合に確認しましょう。
玄関ドアは変更できる?
玄関ドアも共用部分なので、基本的には勝手に変更できません。しかし、玄関ドアの内側の塗り替えや、玄関鍵の変更などは、管理組合に許可をもらってできるケースも多いです。
電気設備リフォーム
電気の容量は、マンション全体で決まっています。そのため電気容量が大きいエアコンや床暖房を設置したり、コンセントを増やしたりするときは、事前に管理組合への問い合わせが必要です。
エアコンは新たに設置できる?
築年数の新しいマンションであれば、各居室にエアコンがおけるような設計が一般的です。しかし、マンションによっては、バルコニーに室外機をおけるスペースがなかったり、壁にエアコンスリーブという配管用の穴があいていなかったりして、エアコンが設置できないこともあります。
勝手に壁に穴をあけることはできないため、管理組合に許可をとりましょう。
コンセントは増やせる?
マンションでもコンセントの増設は可能ですが、電気容量の上限もあるため、管理組合に許可をとってから行います。コンセントを壁の中に埋め込む場合、いったん一部の壁を壊してコンセントを設置し、壁を修繕してクロスを張るという、少し大掛かりな工事が必要です。間取り変更やクロス張替えリフォームと同時に行うと効率が良いでしょう。
床暖房は設置できる?
床暖房も電気容量(もしくはガスの消費量)が大きいため、あらかじめ管理組合に問い合わせましょう。床をはがしての設置が難しい場合、既存の床の上から重ね張りできるタイプの床暖房なら手軽で、予算も抑えられます。
断熱リフォーム
新しいマンションは断熱もしっかりしていることが多いですが、築年数が古いと冬の寒さや夏の暑さが気になることも。マンションの断熱リフォームでは、壁の内側に断熱材を入れる、既存の窓の内側に内窓をつけて二重窓にするなどの工事が行われます。
壁・床・天井の断熱リフォーム
マンションで外側から断熱材を組み込むのは難しいので、住戸単位のリフォームでは室内側から断熱材を入れるのが一般的です。壁や床、天井を一度はがして断熱材を入れることになるため、間取り変更や壁紙張替えなどのリフォームと同時に行うと効率的です。
窓の断熱リフォーム
窓も熱の出入りが激しい場所なので、断熱仕様にするとかなりの効果が期待できます。具体的な方法は、内窓(インナーサッシ)を追加する、窓自体を複層ガラスに変えるなどの方法です。マンションの窓は共用部分のため、必ず管理組合に事前の確認を。
まとめ
集合住宅であるマンションは、管理規約などのしばりもありますが、工夫次第でさまざまなリフォームが可能となります。意外とできないと思い込んでいる工事も、リフォーム会社に相談すると、マンションの規約内で希望を叶えられることも多いです。
管理規約による禁止事項も、物件によって詳細は異なります。「古いお部屋をきれいにしたい」「間取りを変えて気分一新したい」などの希望がある方は、ぜひリフォーム会社に相談してみてください。
記事の監修者
設計士
西村佳晃
一級建築士 / 一般耐震技術認定者 / 宅地建物取引士
建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。
建物の構造に関する判断を行い、 地震に強く、安心して住める『強い家』を設計。プランナーの提案する図面を建築基準法に基づいた設計基準に照らし合わせ、 必要な補強を行い、採光などバランスの一番良い設計図面として仕上げます。