リフォームコラム

【施工内容・条件別】耐震リフォームの費用相場|安く抑えるポイントも

地震によるマイホームの倒壊や被害を防ぐには、耐震リフォームによって万が一に備えておくことが重要です。いつ起こるか分からない地震に備えて、自宅の耐震リフォームを検討している方も多いのではないでしょうか。

耐震リフォームとはどのような工事を行うのか、どれくらい費用がかかるのかを詳しく知っておくと、施工についてイメージしやすくなります。

今回は、耐震リフォームの概要と費用相場、耐震リフォームの施工例について解説します。耐震リフォームの費用を安く抑えるポイントも紹介するため、ぜひ参考にしてください。

そもそも「耐震リフォーム」とは?

耐震リフォームとは、地震による建物の損傷や倒壊を防ぐために、建物そのものの強度を向上させるリフォームのことです。

耐震基準を満たしていない住宅は揺れに弱く、過去に大きな災害にあった住宅は見た目には分からないダメージを受けている可能性があります。耐震リフォームは、地震による住宅の被害を防ぐための欠かせない対策と言っても過言ではありません。

耐震と混同されやすい言葉に、「免震」と「制震」があります。耐震・免震・制震の言葉の意味とそれぞれの違いは、下記の通りです。

耐震建物を固定して倒壊しないよう揺れに抵抗する
免震建物と基礎の間に装置を取り付けて建物に伝わる揺れを大幅に低減する
制震装置に振動を吸収させて建物に伝わる揺れを低減させる

耐震は耐力壁や補強金物などを使って建物を固めるのに対して、免震・制震は装置を取り付けて建物に伝わる揺れを低減させます。

耐震・免震・制震は、それぞれ意味が異なるものの、それぞれの施工をまとめて「耐震リフォーム」と呼ばれています。

耐震リフォームの費用相場

耐震リフォームの費用相場は、「約150万~160万円」です。

しかし、必ずしも相場に近い金額で耐震リフォームが行われるとは限りません。100万円未満で施工できる場合もあれば、300万円以上かかるケースもあります。

耐震リフォームにかかる費用には、施工内容と住宅の状態や条件が大きく影響します。施工内容の組み合わせや住宅の耐震基準によっては、相場より高くなることもあるでしょう。

築年数が古い住宅は大がかりな耐震リフォームが必要なケースが多く、費用が高額になりやすい傾向にあります。

【施工内容別】耐震リフォームの費用相場

耐震リフォームと一口に言っても、施工内容は複数あります。リフォームの目的によって施工内容が変わるため、実際にかかる費用は住宅によってさまざまです。

ここでは、施工内容別に特徴と耐震リフォームにかかる費用相場を解説します。

基礎の補強

コンクリート基礎にひび割れがある場合、樹脂製の液体を注入して補強が必要です。状態によっては、鉄板で強度を高めたり土台の木材を差し替えたりすることもあります。基礎のひび割れや腐食がなければ、基礎の補強が不要となる場合もあるでしょう。

基礎の補強にかかる費用相場は、下記の通りです。

費用相場約20万~30万円

築年数が古い木造住宅は、鉄筋が入っていない基礎が多いため、補強が必要なケースが多く見られます。鉄筋が入っていない基礎に対しては、既存の基礎に鉄筋をつないだり強度を上げるために厚みのあるコンクリートで覆ったりするのが一般的です。

筋交いによる壁の補修

壁や構造の補強には、筋交いを入れる補修工事を行います。筋交いとは、柱と柱の間に斜めに交差するように取り付ける補強材です。古くからある工法の1つで、住宅の倒壊を防ぐ重要な役割を持ちます。

筋交いによる壁の補修にかかる費用相場は、下記の通りです。

費用相場1か所あたり約5万~20万円

筋交いを入れる場合、内壁・外壁のどちらかを撤去しなければなりません。費用を安く抑えたい場合は、外壁を撤去する方法がおすすめです。ただし、外側からの工事は、十分なスペースを確保できる場合に限られます。

耐震金物の取り付け

耐震リフォームでは、柱や梁、筋交いなどに耐震金物を取り付けます。耐震金物は耐震リフォームに必要不可欠な補強材で、住宅の倒壊を防ぐ重要なパーツです。耐震金物が取り付けられていない状態で大きな揺れが起こると、柱や梁が引き抜けてしまうおそれがあります。

耐震金物の取り付けにかかる費用相場は、下記の通りです。

費用相場1個あたり約3万円

耐震金物には、筋交い金物・ホールダウン金物・仕口金物など種類が豊富です。取り付ける場所や目的によって適した耐震金物が異なります。

耐震パネルの取り付け

耐震性を高めるために、耐震パネルを取り付けることもあります。耐震パネルの取り付けにより、柱と基礎の結び付きが強化されるだけでなく、揺れの伝わり方が分散されることも特徴です。

耐震パネルの取り付けにかかる費用相場は、下記の通りです。

費用相場約25万~65万円

外壁材を撤去して耐震パネルを取り付け、さらに防水シートと新しい外壁材を取り付けます。壁に厚みができることで、断熱材としての効果も期待できます。

ただし、耐震パネルは地震の揺れが住宅全体に伝わるため、ほかの施工と組み合わせて耐震性を高めるのが一般的です。

ブレースの増設

ブレースの増設は、軽量鉄骨造の建物の強度を上げるために行われる工事です。鉄筋コンクリート造住宅や学校・病院などの施設にも用いられます。「ブレース=筋交い」を意味し、木造住宅の筋交いと同様に対角線上に取り付けて変形を防ぎます。

ブレースの増設にかかる費用相場は、下記の通りです。

費用相場1か所あたり約5万~20万円

ブレースの増設により、地震に弱い部分をピンポイントで対策できます。工数が少なく施工がしやすいこともメリットです。

屋根材の軽量化

重い屋根は倒壊リスクが高まるだけでなく、遠心力で揺れが大きくなります。屋根材の軽量化は、住宅にかかる負担の軽減と地震による揺れを小さくする目的で行われます。

ただし、高い耐震性を目指すには、屋根材の軽量化だけでは不十分です。地震に強い住宅にするには、ほかの施工内容も組み合わせる必要があります。

屋根材の軽量化にかかる費用相場は、下記の通りです。

費用相場約80万~200万円

耐震リフォームに使われる屋根材には、軽量瓦・化粧ストレート・金属屋根などがあります。種類やグレードによって費用に差が出るため、外観とのバランスも考慮して予算に合う屋根材を選びましょう。

【条件別】耐震リフォームの費用相場

耐震リフォームの費用を大きく左右するのは主に施工内容ですが、住宅の条件によっても相場は変わります。自宅が建築された時期や耐震基準を確認した上で、耐震リフォームの費用相場をチェックすることがポイントです。

ここからは、住宅の条件別に耐震リフォームの費用相場を解説します。

旧耐震基準で建築された住宅

旧耐震基準で建築された住宅とは、「震度5強レベルの地震に耐えられる建物」という基準を満たす住宅です。1981年以前に建てられた木造住宅の多くは、旧耐震基準で建築された住宅である可能性が高いと言えるでしょう。

耐震リフォームの費用相場は、下記の通りです。

費用相場約150万〜200万円

旧耐震基準で建築された住宅の多くは耐震性が低く、補強が必要な場所も多いため、耐震リフォーム費用が高くなりやすい傾向にあります。

旧耐震基準で建築された住宅には、「耐震診断」が義務化されています。耐震性能を評価し、耐震リフォームの必要性を判断するためのものです。耐震診断にかかる費用は、5万~20万円です。

2000年5月以前に建築された「81-00木造住宅」

1981年6月に建築基準法が改正され、新耐震基準が設けられました。2000年5月以前に建築された住宅は、「81-00(ハチイチゼロゼロ)木造住宅」と呼ばれます。

81-00木造住宅は、旧耐震基準より耐震性が向上しており、「震度6~7レベルの地震に耐えられる」ことを前提としています。ただし、現行の耐震基準に比べると耐震性が劣るため要注意です。

耐震リフォームの費用相場は、下記の通りです。

費用相場約120万〜160万円

耐震リフォームにかかる費用には、築年数よりも建物の状態が大きく影響します。メンテナンスがされている住宅であれば、大きな補修の必要なく費用を安く抑えられるでしょう。

新耐震基準(現行耐震基準)で建築された住宅

2000年6月以降に建築された住宅は、新耐震基準(現行耐震基準)が適用されています。接合金具の対策や耐久壁の配置なども考慮しているため、81-00木造住宅の新耐震基準より安心感のある耐震基準です。

現行耐震基準で建築された住宅は耐震性に優れており、おおむね安心と言われていますが、地震への不安があれば耐震診断でチェックしてみましょう。

耐震リフォームの費用相場は、下記の通りです。

費用相場約100万〜130万円

現行耐震基準を満たす住宅は、リフォームの規模が小さくて済むため費用を安く抑えられます。

【価格帯別】耐震リフォームの施工例

耐震リフォームは、予算に合わせて行うこともできます。リフォームの詳細や必要な資金をイメージするために、価格帯別にどのような工事ができるのかチェックしておきましょう。

以下では、価格帯別に耐震リフォームの施工例を紹介します。

~50万円でできる耐震リフォーム

50万円ぐらいの予算でできる耐震リフォームの施工例は、以下の通りです。

筋交いの設置と壁の補修工事(約25万円)

壁の強度の向上を目的とした補修工事です。耐震性が低い部分をピンポイントで補強することで、地震だけでなく台風などによる横からの力に備えられます。材料費と工事費込みで約25万円が相場です。外側から工事を行う場合は、工事費が別途3万~5万円かかります。

耐震金物の取り付けと壁の補修工事(約40万円)

住宅の倒壊を防ぐことが主な目的です。1個3万円の金具であれば、10か所を目安に施工できます。壁の補修にかかる材料費と工事費用は約10万円が目安です。

耐震診断にかかる費用をあわせても、50万円の予算で地震への備えができます。

50万~100万円でできる耐震リフォーム

50万~100万円でできる耐震リフォームの施工例は、以下の通りです。

ブレースの増設による壁の補強工事(約50万円)

ブレースを増設して住宅の強度を高める工事です。外側からの工事も可能で、筋交いの設置に比べて短期間で工事が完了します。外側から3か所にブレースを増設する場合の費用は、材料費と工事費込みで約50万円です。

耐震パネル取り付け工事(約65万円)

耐震パネルを取り付けることで、柱と土台の結合を強めて耐震性を高めます。天井や床を剥がさずに施工できます。費用総額は、材料費と工事費をあわせて約65万円です。

いずれも外側からの工事となるため、住宅で生活しながら耐震リフォームができます。

100万~200万円でできる耐震リフォーム

100万~200万円でできる耐震リフォームの施工例は、以下の通りです。

屋根のふき替え工事(約120万円)

住宅の倒壊リスクを軽減するための工事です。軽い屋根材に替えることで、地震による深刻なダメージを防ぎます。費用相場は、材料費や屋根材の撤去・ふき替えにかかる工事費込みで約120万円です。

一部屋型の耐震シェルターを設置(約150万~200万円)

寝室や高齢者・子どもが過ごすスペースを、耐震シェルターにリフォームすることも可能です。基礎の補強や鉄骨部材の組み込みにより、一部屋を揺れに強い空間にします。4畳半の広さであれば、費用相場は約150万~200万円です。

リフォーム内容が大がかりになるほど費用も高くなります。屋根面積や部屋の広さによっては、相場よりも上回ることがあるでしょう。

200万円~でできる耐震リフォーム

200万円以上の予算でできる耐震リフォームの施工例は、以下の通りです。

柱や梁の交換・筋交いの設置による住宅全体の工事(約1,200万円)

柱や梁の交換、筋交いの設置、耐震金物の取り付けを行うことで、耐震性に優れた住宅を目指せます。内部の解体が必須となるため、工事が終わるまでは仮住まいが必要です。

また、価格帯別に紹介した耐震リフォームを、予算の範囲内で組み合わせる方法もあります。住宅全体の工事にすべきか部分的な補強を行うべきか迷う場合は、信頼できるリフォーム業者に相談してみましょう。

耐震リフォームの費用を安く抑えるポイント

施工内容や範囲によっては、耐震リフォームの費用が数百万円を超えることもあります。できる限り費用を安く抑えて地震にしっかり備えたいという方は、事前準備をしっかり行い、お得な制度を積極的に活用しましょう。

ここでは、耐震リフォームの費用を安く抑えるポイントを5つ解説します。

予算を重視して優先順位を決定する

住宅全体のリフォームをすれば耐震性は増すものの、そのぶん費用は高額になります。できるだけ費用を安く抑えるには、予算を決めて優先順位を決めることがポイントです。

50万円以下・100万円以下・200万円以下など予算をざっくりと決めておくと、無理せず耐震リフォームを進められます。補強を中心とした施工であれば、100万円以下で施工できるケースがほとんどです。予算に合わせて優先順位を決定しましょう。

耐震診断を受けて必要な施工を洗い出す

必要な施工を洗い出すために、耐震診断を受けるのもおすすめです。耐震診断は旧耐震基準の一部の住宅にしか義務付けられていないものの、義務化されていない住宅でも耐震診断を行うことでどのような施工をすればよいのかを洗い出せます。

耐震診断を受けるには費用がかかりますが、耐震リフォームを依頼する業者に任せることで費用を抑えられます。助成制度を実施している自治体もあるため、確認してみましょう。

補助金制度・減税制度を活用する

自治体の補助金制度や国の減税制度を活用すると、耐震リフォームの費用を大幅に軽減できます。

耐震リフォームの補助金制度は、自治体によって補助率や限度額が異なります。段階的なリフォームも補助金対象とする自治体もあるため、自治体に問い合わせてみましょう。

耐震リフォームを行うと、所得税と固定資産税が控除されます。所得税の控除には、「リフォーム促進税制」「住宅ローン減税」を利用できます。固定資産税の控除は、旧耐震基準で建築された住宅が対象です。

ほかのリフォームと同時に行う

耐震のみを目的にリフォームを行うよりも、ほかのリフォームと同時に行うほうがトータル費用を抑えられます。

断熱ボードの設置や床暖房の設置など、壁の解体や間取りの変更と同時に行えるリフォームはさまざまあります。特に旧耐震基準の住宅は劣化部分が多いため、快適性を高めたい方におすすめです。

複数のリフォーム業者から相見積もりをとる

耐震リフォームの費用を安く抑えるには、複数のリフォーム業者から相見積もりをとることも大切です。相見積もりにより、費用相場はもちろん業者の対応力も比較できます。

リフォーム業者の比較では、提示価格が極端に安すぎる業者や追加工事の説明があいまいな業者は避けましょう。高額な費用を請求されたり手抜き工事をされたりするリスクがあるため要注意です。

信頼できる業者に依頼するために、実績や口コミ情報を参考にしましょう。自治体の相談窓口で相談して耐震リフォームに対応している業者を探すのも1つの方法です。

まとめ

耐震リフォームの費用相場は、施工内容や住宅の条件によって大きく異なります。基礎の補強や壁の補修など50万円以下でできる施工もあれば、屋根のふき替えや住宅全体のリフォームなど費用が高額になる施工もあります。

また、旧耐震基準で建築された住宅は、新耐震基準(現行耐震基準)で建築された住宅に比べて費用が高くなりやすいことが特徴です。

費用をできるだけ安く抑えて耐震リフォームをしたい場合は、気になるリフォーム業者を含めた複数の業者から相見積もりを取ることがポイントです。関東エリア・関西エリアで耐震リフォームを検討している方は、「スペースアップ」にお気軽にご相談ください。

記事の監修者

リフォームアドバイザー

藤本塁

お客様のお困りごとやご要望を伺い、提案から完工までをトータルでサポート。お客様からのご依頼に合わせて、豊富な知識と経験を駆使し、安心安全快適な暮らしをご提案。商品の特性や選び方から費用の目安など、理想の暮らしをご検討する際のポイントや注意点を、わかりやすくお伝えします。

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